取材・文責:株式会社せいび広報社 榊原 慎
2026年5月、神奈川・パシフィコ横浜。
トラック・バス業界が二年に一度集う祭典「ジャパントラックショー2026」が、3日間にわたって熱気に包まれました。
そのなかでひときわ存在感を放っていたのが、整備機器の総合メーカー・株式会社アルティアのブース、A-07。
高くそびえる展示構造、足を止める来場者が絶えない流れ──現場で見た光景と、担当者から伺った熱量を、ここにレポートとしてお届けします。

会場の中でもひときわ存在感を放っていた、アルティアブースA-07。迫力ある展示で来場者を魅了した3日間
掲げられたテーマは、「効率化×安全性 ~整備に新しい価値を~」
人手と時間に頼ってきた整備作業を、もっとスマートに、もっと最適に。
深刻化する人手不足、年々高まる安全管理への要求──業界が抱える二つの大きな課題に対して、アルティアは「次世代の答え」を形にしました。
そして、何よりまず目を奪われたのが『ブースそのものの“かっこよさ”』です。
高くそびえる構造体、計算された動線──通路を歩く来場者の足が、ここで自然と止まる。
誇張ではなく、会場のなかでもひときわ存在感を放つブースに仕上がっていました。
「パースをいただいた時点では、本当にこの通り実現できるのか、と正直思っていました。」と担当者は微笑みます。
「でも、イメージそのままに、しかも高さをめいっぱい使った迫力ある展示にできました。手応えは大きかったですね。」
この“かっこよさ”は、決して見た目の話だけにとどまりません。
整備の現場には、油や鉄粉、雑然とした道具──どうしても“泥臭い”イメージがついて回りがちです。
けれども、人を惹きつける職場、若い世代が「ここで働きたい」と思える環境を整えていくうえで、
整備機器そのものの佇まいやデザイン性は、確実に意味を持つ要素になってきています。
機能だけでなく、美しさも提案する。整備の現場に、誇りと魅力を表現する。
──そのメーカーとしての姿勢が、今回のブースには色濃く表れていました。
だからこそ、通り過ぎようとした人がふと立ち止まり、商品の前で説明に耳を傾け、自然と会話が生まれていく。
3日間、その流れは途切れることがありませんでした。
ここからは、特に注目を集めた4つの主力商品を順にご紹介します。

新設計のキャタピラ式ツインリフト。
コンパクト化と高性能を両立し、現場の毎日を変える進化を遂げた最新モデル
大型トラック・バス整備の心臓部とも言えるツインリフト。
今回のモデルが進化したのは、見た目以上に「現場の毎日」に直結する部分です。
最大の特長は、特許取得済の油圧拡縮受台です。
「これまでは、車の下に潜り込んで手で受台を動かしていたんです」と担当者。
腰をかがめ、車両の下にもぐり込んで位置を合わせる──長年、当たり前とされてきた光景でした。
それが、リモコンひとつで完結します。さらにクロスレーザーアタッチメントを組み合わせれば、
リフトアップポイントにレーザーが照射され、受台の当たり位置がひと目でわかる仕組み。
腰を痛めるリスクが減り、作業時間も短縮──安全性と効率性が、同時に手に入ります。

リモコン操作で拡縮する受台。
手で引っ張り出して調整する必要もなく、作業者の負担を軽減する。
安全面の作り込みも、見逃せません。
従来の非常停止ボタンに加え、新たに「安全スイッチ」を標準装備。
一次側の電源そのものを断つことで、確実に停止できます。
さらにリフトアップ時の誤操作防止機構も搭載され、受台が300mm以上上昇中は移動や拡縮ができない制御に。
そしてオプションアタッチメントの車両ズレ抑止アタッチメントは、車両の荷重がかかると自動で閉じる構造です。
万が一の地震時にも、退避する時間を稼げる──シンプルですが、人命に関わる思想と言えます。

特許出願中の車両ズレ抑止アタッチメント。
受けに負荷がかかると両側の爪が挟み込み車両落下事故を抑制する
リフト最下時には床面が完全にフラットになる「FLAT and FLAT機能」を採用。
オイル機器の移動や車両の入出庫がスムーズになり、つまずきや接触といった小さな事故のリスクを着実に減らします。
加えて、稼働時間をリアルタイムで可視化するマルチ監視モニターも標準装備。
「壊れて動かなくなる前に、点検や交換をご提案できるんです。」データの力で“予知保全”を実現する、これからの整備機器の形がここにあります。
コンパクト設計で、設置のハードルも下げる
ここまでの進化を備えながら、設置面でも嬉しい工夫が。
ポスト全高を2,700mmから2,300mmへとコンパクト化したことで、既存ピットからの交換も容易になり、工期短縮と工事費削減を実現します。
それでいて、揚程は従来同様1,500mm、能力は1本あたり16t、2本で32tを確保。
1t車から大型車まで、2軸間2,200mm〜9,200mmという幅広い車種に対応できる懐の深さも、見逃せないポイントです。
参考出品されていたタブレット式リモコンも話題に。
「漢字が読めない外国人作業者の方も増えています。
絵と英語で直感的に操作できるリモコンを、今まさに開発中です。」
グローバル化する整備現場への、確かなまなざしを感じる取り組みでした。

参考出品されたタブレット式リモコン。直感的に操作でき、英語表記にも対応。
外国人作業者の活躍も後押しする新たな提案

最大25tの大型車両を、たった一人で動かす重量運搬機器『easy mover』。
会場で最も人だかりを生んだ注目展示
ブースで一番の人だかりは、間違いなくここでした。
最大25tの大型車両を、一人で動かせる重量運搬機器『easy mover』。
デモンストレーションを見守る来場者の顔には、決まって同じ表情が浮かびます──「えっ、本当に動いた。」
操作はいたってシンプル。タイヤの隙間にローラーを押し当て、そのローラーが回転することで車両を動かしていきます。
「押す」のではなく、タイヤが回るのを、機械が手伝う。発想の転換が、この製品の本質と言えるでしょう。

タイヤの隙間にローラーを押し当てて回転させる独自機構。
脱着式バッテリーで大規模工場での運用にも柔軟に対応する。
仕組みがやさしいからこそ、だれでもボタンひとつで巨大車両を動かせます。
3日間、ブースはまるでアトラクションのような盛り上がり。
実用面の作り込みも抜かりありません。100Vの専用ケーブルで充電可能。
「これまではメカニックが大人数で押していたんです。」整備現場で長く続いてきた光景を、小さな一台が変えていきます。
「いつもの労力を思い出すと、こんなに簡単でいいのかと驚きます」──現場経験者ほど、その価値を体で理解されるそうです。
深刻な人手不足のなかで、これほど即効性のあるソリューションは、そう多くないのではないでしょうか。
ちなみに、ボディは本当にコンパクト、ハンドルも短めに設計されています。置き場所に困らない設計は、狭い工場にも嬉しいポイントです。
使用環境については、砂利・濡れた路面・傾斜・段差は不可と、注意点も率直に説明されていたのが印象的でした。

固定カメラとタブレットで構成される、車両画像撮影・保存・管理システム『Vehicle Snap』のデモ展示
整備記録のエビデンス管理──近年、ここに頭を悩ませる事業者は少なくありません。
その重い課題に、シンプルな答えを差し出すのが車両画像撮影・保存・管理システム『Vehicle Snap』です。
ブースには4箇所の固定カメラが配置され、操作はタブレット一つ。
デモンストレーションの一部始終を見守っていた来場者からは、「これは便利!」「うちにもほしい」という声が、上がっていました。
何が、そんなに便利なのでしょうか。
タブレットでナンバープレートを撮影した瞬間、その車両専用のフォルダが自動で生成されます。
あとは固定カメラのシャッターをタブレットからワンタップ。
4箇所同時に撮影され、すべて同じフォルダに整理されていきます。

撮影と同時にナンバーごとのフォルダが自動生成。
誰が撮っても同じ精度で記録が残せる仕組みが整備現場を支える
「これまではデジカメで撮影して、夕方に1枚ずつ整理する作業が大変だったんです。
これなら、誰が撮っても同じ画角、同じ精度で記録が残せます。」
価値は、効率化の先にもあります。
「しっかり記録を残しておくことが、お客様への信頼につながり、何より自社を守ることにもなるんです。」
──担当者の言葉が、コンプライアンス強化が求められる業界の空気を、そのまま映し出していました。
画像はナンバー+日付で自動命名され、検索もメール添付もスムーズに行えます。
最近では完成検査ラインだけでなく、一般整備や鈑金分野への展開ニーズも増えているとのこと。
「20枚で足りないお客様も出てきたので、100枚以上保存できるよう改良中です。」進化は、まだ止まりません。

設置された固定カメラ。
タブレットからワンタップで4箇所同時撮影が可能になり、作業効率を大きく向上させる

車載洗浄の『クイックリフレッシャーⅢ』(左)と丸洗い完全洗浄の『エキゾーストストリーム』(右)。
DPF整備のトータル提案
3日間を通して、最も反響が大きかったのがDPF洗浄関連の展示でした。
ラインナップは2機種。
丸洗い完全洗浄を実現する『DPFエキゾーストストリーム』、そして車載状態のまま洗浄できる『DPFクイックリフレッシャーⅢ』。
シーンに応じて使い分けることで、DPFメンテナンスのトータルソリューションが完成します。
なぜ、洗浄なのか。答えはコストにあります。
「DPFを交換すれば、1回あたり100万円単位。これが車両の生涯で数回程度必要になります。」と担当者。
一方、洗浄なら1台あたり約7〜8万円で済みます。
中型車で20万kmごとの交換が必要だったところ、定期洗浄を挟むことで交換回数を減らせる可能性があるのです。
シンプルな計算ですが、効果は大きい。
しかも、走行中の突然停止というリスクまで軽減できるとなれば、物流現場にとってこれ以上ない安心材料となるはずです。

洗浄前と洗浄後のDPFサンプル。
一目で違いがわかるビフォーアフターは、来場者の関心を一気に引き寄せていた
洗浄プロセスは、フルオートで進みます。
クリーナー1(アルカリ性)でススを除去し、クリーナー2(酸性)でアッシュを分解、リンスで中和、最後に水で洗い流す
──4段階のプログラムが、自動で順に流れていきます。
所要時間は洗浄約1時間+乾燥約30分。
「セットしたら、作業者は他の仕事に専念できます。」
オンザカー対応である点も大きな価値です。DPFを取り外す必要がないため、現場での洗浄ビジネスが新たに生まれているそうです。
整備機器が、ビジネスモデルそのものを変え始めていると言えるでしょう。
そして今回、特にこだわりが詰まったポイントが操作パネルの一新です。
イラストとカラー表示を追加し、字を読めない外国人作業者でも直感的に操作できる設計に仕上げられました。
「字だけだとわからない、というお声がありまして。色も付けて、絵も付けて。
開発スタッフ全員で『何色がいいかな』と議論しながら作り込みました。」
小さな変更に見えて、現場目線がしっかりと詰まっています。アルティアらしい一手と言えるのではないでしょうか。

今回リニューアルされた操作パネル。
イラストとカラー表示を追加し、外国人作業者にも直感的に伝わる設計に進化
「省力化、安全性、効率化──そのすべてを、お客様にしっかり訴求できた3日間でした。」
ブース最終日、担当者の表情には、疲労よりも充実感がにじんでいました。
来場者から寄せられたのは、DPF関連についての不安、熱中症対策の悩み、設備投資の難しさ──いずれも整備業界の「いま」を映す課題ばかりです。
「新商品の開発につながるヒントも、たくさんいただきました。お客様にどれだけ価値をお届けできるか。
そのために、固定概念を覆すような発想で、これからも挑戦を続けていきたいですね。」
人手不足、安全、コスト、コンプライアンス──整備業界が向き合う重い課題に、現場目線の答えを差し出し続けるアルティア。
ジャパントラックショー2026は閉幕しました。けれども、ここで生まれた対話と気づきが、これからの整備現場をどう変えていくのか──物語は、ここから始まります。